ヤクザとキリスト「塀の中は、母の子宮だった」【元ヤクザ《生き直し》人生録】
【塀の中はワンダーランドVol.1】
◼️塀の中は、母の子宮だった
ところで、ボクはこの本で皆さんに何を伝えたいのか。
ボクはキリスト教徒になったからといって世の中の善と悪について説教するとか、そんな高尚(こうしょう)な話はボクのぼんくらな頭ではできない。むしろ、自分がダメになる話はできる。例えばシャブに対してはその快楽と禁断症状の苦しみや拳銃の仕入れ方、逮捕、取り調べ、デタラメ裁判の話もできる。またこういう犯罪を犯したら何年塀の中へいくとかの話もできる。ただ、ボクが伝えたいのはもっと切実な話だ。
どうしたら自分の生きやすい居場所を見つけることができるのか。この話しはヤクザのシノギの話なんかよりも、皆さんに役立てるような気がする。特に会社・学校など組織の縛(しば)りの中で今イチ自分の居場所を失っている人や、定年退職前の人や、あるいは引きこもりの本人やお子さんが引きこもってしまった親御さんなどに読んでもらえると、あまりのデタラメでワンダーな話で気持ちもラクになり、こんな人生もあるんだなぁ、と呆(あき)れて現状を突破できるかもしれない。
とはいえ、人生で自分がダメになりそうなときゆっくり深呼吸をしてもう一人の自分と「対話」することを伝えたいだけかもしれない。ボクの場合、世の中との関わりでは、すぐカッとなって自分と向き合えず、犯罪に走ったことが最大の後悔かもしれない。
行動する前の自分をもう一人の自分、そうボクの場合は、自分の心の中に引っ張り込んだ神の視点で認識すること。それだけで自分の本当の気持ちが整理できるんだ。自分の存在を確かに感じることができるんだ。
煎(せん)じ詰めればこのたった一つのことだけかもしれない。だからこれから始まるボクや愛しささえ感じる懲役囚たちのバカ過ぎて真剣な犯罪と塀の中のエピソードを笑って欲しいと思う。
そうだ、今思えば、ボクは押し入れの中や塀の中で妙に落ち着くのはなぜか、はっきりわかった気がする。
ボクは、二歳の頃に亡くした母のお腹の中に戻りたかったのかもしれない。
何度も何度も人生のやり直しを求めていたのだ。
ボクにとって塀の中は、母の子宮だった。
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2020年5月27日
『塀の中のワンダーランド』
全国書店にて発売!
新規連載がはじまりました!《元》ヤクザでキリスト教徒《現》建設現場の「墨出し職人」さかはらじんの《生き直し》人生録。
「セーラー服と機関銃」ではありません!「塀の中の懲りない面々」ではありません!!
「塀の中」滞在時間としては人生の約3分の1。ハンパなく、スケールが大きいかもしれません。
絶望もがむしゃらに突き抜けた時、見えた希望の光!
「ヤクザとキリスト〜塀の中はワンダーランド〜」です。